私の故郷は山梨である。幼い頃、戦国随一の強固な軍団や信玄堤などの民政を大人たちは話してくれた。サラリーマンとなり、各地の武田一族の史跡を訪ね、その歴史と浪漫を探る紀行文である。
風林火山の旗 海を渡る
古代ローマ帝国の遺産展
2009-10-30-Fri  CATEGORY: 美術
上野7
2009年10月23日、上野の西洋美術館の古代ローマ帝国展を観る(写真)。初代皇帝アウグストウスの時代と業績に焦点をあて、「栄光の都ローマ」と「悲劇の街ポンペイ」に関する117点が展示されている。BC1世紀からAC2世紀かけて最大両国をイギリス、ベルギーから北アフリカまで拡大した帝国のエネルギーが溢れている。「第一章帝国の誕生」には、大理石の胸像、皇帝の頭部、ブロンズの胸像「第二章アウグストウスの帝国とその機構」には柱としての大理石の女性像、ブロンズに金箔の女性の足、フレスコ壁画の数々、白大理石の男性像、ガラス球の骨壷、「第三章帝国の富」にはアウグストウスの金貨や銀貨、ポンペイの居酒屋出土の金貨、ブロンズの精緻な彫刻を錘とした秤、銀器、真珠の首飾りや耳飾り、エメラルドに金を装飾した首飾り、双頭の蛇の指輪、ブロンズのランプ、鉛とブロンズの水道弁、鉄の鍬、鉄の庭鋏、ポンペイから出土した庭園の風景の多色の壁画などの展示を観る。日本の弥生式時代の世界である。土中や灰燼の中から発掘された展示物は造られたばかりの新しさがあり、その芸術性もロダンの彫刻に遜色がない。ポンペイの庭園の壁画から推測される生活ぶりは現在の地中海の別荘と大して変らない。この2000年の時間が圧倒的に圧縮されタイムマシンの世界に浸る。人間はこの2000年間の間に、少なくとも文化芸術の領域では進歩していないとすら思った。カルチャーショックのひと時であった。         

          秋気満つ古代ローマの蛇指輪
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ゴーギャン展
2009-08-19-Wed  CATEGORY: 美術
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7月16日、東京国立近代美術館にゴーギャン展を妻と観に行く。東京駅から皇居のお堀端を走るシャトルバスの車窓は魅力的で、時間的にも早く、しかも無料なので地下鉄で竹橋まで行くよりは楽しい。目的は「自分は何処から来たのか・我々は何者か・我々は何処に行くのか」を観ることである。第一章から第三章までに53点が展示されている。海外、国内の美術館で観た作品も少なくないが、これほど一同に会したゴーギャンの作品は初めてでその魅力を堪能する。第一章「野生の開放」は株式の仲買人で成功したゴーギャンが、印象派の画家たちに刺激され34歳で画家として生きることを決意する。ゴッホと共同生活をしたアルルや、ブルターニュ地方に「楽園」を求めた、タヒチ以前の作品が13点ある。いずれも人間の内面の孤独を感じさせる。第二章「タヒチへ」は熱帯の楽園を求めて南太平洋のタヒチにアトリエを構え制作した作品33点がある。油彩と連作版画である。「かぐわしき大地」ではタヒチの女とイブを重ねている。マリオの神々や、タヒチの闇の深さを描いた「悪霊の日」、死と胎児を一体化した「死霊が見ている」万物を再生させる月の神ヒナを描いた「感謝」など宗教的、哲学的描写の作品が並ぶ。第三章「漂泊のさだめ」には7点展示されその一枚が「我々は何処から来たのか・我々は何者か・我々は何処に行くのか」である。一旦パリに戻ったゴーギャンは、再度タヒチに来るが、病魔、貧困、愛娘の死という不幸お運命を呪い、精神的な遺言としてこの大作を制作した。右側に生まれた文字色ばかりの赤子、中央にイブと重ねた林檎を捥ぐタヒチの熟した女、左側に老婆を配している。人間とは何ぞや、と問いかけている。この絵にたどり着く第一章からの作品群は振り返って観ると、人間の不安、孤独、空虚をぶれることなく描いているように思えた。未開の地を求め続けたゴーギャンは、1901年、タヒチから千数百km離れたマルキーズ諸島に移住し、漂泊の人生を閉じた。
 上野の西洋美術館に寄り、数多くの画家と数多くの作品を鑑賞した。ゴーギャンの重みのある人生を観賞した後なので分散型展示を気楽に楽しむことが出来た。常設館は、65歳以上は無料なので夫婦でその恩恵を受けたためかもしれない。
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阿修羅展
2009-06-03-Wed  CATEGORY: 美術
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>/strong>6月2日国立博物館平成館で、阿修羅展を観る(写真)。1時間以上の待ち時間の情報を得ていたので開館前に着き、御蔭で苦痛を感じるほどの「渋滞」も無く入る。第一章は興福寺須弥壇から出土した遺物で、蝶や花をあしらった白銅の鏡、直径が40cmもある金銅大盤の中央には「上」という文字がはっきり読み取れる。銅錫鉛合金製の響銅盤がある。千三百年も昔に合金技術があり薄い容器に模様をつけた鋳造技術があったことは驚きである。水晶念珠、水晶丸玉、黄・黄緑・青緑・褐色のガラス碁石形玉、瑪瑙念珠、水晶六角柱などの精緻な加工技術にも驚く。私の「驚き」の中に、千三百年も昔には出来るはずがないという現代人の驕りがある。見方によっては人類はさほど進歩していないとも云えるように思えた。
 第二章は八部衆と十代弟子の立像がズラリと並ぶ。何れも734年の作である。八部衆のひとつが国宝阿修羅像で、別室のスポット照明の中に立つ。何故か判らぬが、私は込み上げる気持ちを抑えきれず涙ぐむ。感動!眉間を寄せた少年の先を見つめる眼、人間そのものの表情、草履を履いている足、耳で繋がる3つの顔と6本の手に何の不自然さもない。像を見つめていると周囲の大混雑の観衆は消え、私と少年の世界となる。阿修羅像は後に孝謙天皇となる16歳だった安倍内親王か、聖武天皇の少年の姿と重ねた記事を読んだが、その高貴さは納得する。私はこれほどの作品に作者が示されていないことに気付いた。他の八部衆、十大弟子立像にも作者名が無い。
 第三章は鎌倉時代作の四天王像には運慶の弟子康慶の作と記されているし、運慶作の釈迦如来頭部もある。四天王は何れも鎌倉時代らしい剛健な立像である。
 日本人の創造性の素晴らしさに感銘し、誇りを持って会場を出る。その足で都美術館の「日本の美術館名品展」220点を観るが、ピカソ、ミレー、モネ、黒田清輝、岸田劉生、小磯良平、藤田嗣治らの名画も阿修羅の少年の前ではかすんでしまったのである。
 

阿修羅来て上野の森に夏きざす













 
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加山又造の世界
2009-02-28-Sat  CATEGORY: 美術
冬・春秋波濤
2月26日、新国立美術館で日本画家、加山又造(1927−2004)の展覧会を観る。エントランスには「雪」「月」「花」の大作三部作が並ぶ。「花」は左側に夜桜、右側に炎柱が突き抜け桜花をうっすらと染めている。第一章「動物たち、あるいは生きる悲しみー様式化の試み」の部屋には、ラスコー洞窟壁画を参考にした「原始時代」、ブリューゲルの「雪中の狩人」の影響を受けた「冬」(写真上)。第二章「時間と空間を超えてー無限の宇宙を求めて」には中央に桜満開の山を、近景に紅葉山という二季節を描いた「春秋波濤」(写真下)。第三章「線描の裸婦たちー永遠のエロテイシズム」には散る桜の無重力空間を舞う4人の裸婦の「はなびら」と「はなふぶき」。第四章「花鳥画の世界ーいのちのかたち」には左から右に爛漫と咲き誇る桜花と右端に篝火を描いた神秘的雰囲気の「夜桜」。第五章「水墨画ー色彩を超えた色」には写実的な波濤の中にその一瞬が永遠に続くような静寂と波の生命感が溢れた「月光波濤」は私が最も魅せられた作品である。第六章「生活の中に生きる美」には陶器の絵付け、着物の絵付け、祇園祭山鉾南観音山綴織の原画、「新潮」の表紙絵、宝飾デザイン、羽子板などが展示されている。展示されてないが、何とCGでの絵も発表するという多彩な作家である。
 全部で108点の展示を観賞すると、加山又造の好奇心、躍動感、斬新さ、革新性、新旧技術の駆使を、迫力をもって肌に感じる。マテイスなどのキュウビズムにも近く、これが日本画かと思わせながらも、やはり間違いなく日本画であることを納得する。底流には日本人としての感性がある。
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妻沼聖天堂
2008-09-13-Sat  CATEGORY: 美術
23貴惣門
9月12日、上杉顕彰会の史跡めぐりの行事で妻沼聖天堂に行く。参加者77名を四班にわけ夫々に現地の案内ボランテイアが付く。聖天堂は治承三(1179)年に斉藤実盛が、自分の守り本尊の大聖歓喜天を祀ったことに始まり、次男の実長が開創する。斉藤実盛はこの地方を拠点とした平安末期の武将で、保元の乱や平治の乱では源義朝の忠実な家臣として奮戦する。後に関東で平氏に仕え、平維盛の後見役として頼朝追討に出陣する。木曽義仲追討の戦いで落命する。
 御本殿と貴惣門(写真)が国指定重要文化財であり、現在の建物は250年前に建てられた。建物は見事な極彩色に彩られた彫刻で埋め尽くされている。埼玉の小日光と言われる由縁である。本殿は平成15年から20年までかけて修復中で、工事架台が組まれテントが張られ作業中である。月2回、午後2時間のみ開放され、架台の通路を上り、目の前で彫刻を覗くことが出来、江戸時代の彫刻技術の水準に驚く。改修している匠たちの精密な手さばきを見ることも出来る。屋根は0.4mmの厚さの銅版葺であるが、江戸時代に既に銅版加工技術があった。金箔と黒漆、極彩色の取り合わせも重厚かつ華美の豪華な造形であった。
     江戸の朱を残す拝殿秋めけり
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